全国でも有数の暑い街として知られる館林市街にある自家焙煎珈琲copicopi(コピコピ)。もともとコーヒーが縁で結ばれた佐藤さんご夫婦は、2015年10月に横浜からの移住を決断し、わずかその半年後に念願の自宅兼カフェを開業した。
夫・雄一郎さん、妻・早苗さん、近所の市立保育園に通う長男・龍君(4歳)、長女・咲月ちゃん(0歳3か月)の4人家族。ご夫婦ともに生まれも育ちも都会暮らしからの移住。
はじめに館林への移住のきっかけを伺いたいのですが。
雄一郎さん|跡継ぎがいなくて、わたしの祖父が営んでいた金物屋が長く空き店舗になっていたんです。そこでカフェを開きたいと思って。
お昼寝から目覚めたばかり、長女・咲月ちゃんを抱いて。
早苗さん|横浜に住んでいた頃は、喫茶店を一店舗任されていました。コーヒーに対する知識や経験も十分あったし、群馬でカフェを起業することに関して特に問題や不安はありませんでした。
これまでに群馬へ来たことはありましたか?
雄一郎さん|もともとわたしは、生まれも育ちも東京の神田。実は、群馬へ遊びに来たことは一度もなかったんです。妻の早苗もはじめてでした。
移住は夫婦で決めましたか?
雄一郎さん|はい、そうです。以前から自然豊かな環境で、ご近所付き合いを大事にしながら子どもを育てたいと思っていたんです。長男の龍が2歳の誕生日を迎える直前に引っ越してきました。
早苗さん|自分たちのお店をもつことが長年の夢だったし、仕事と育児を両立させるには、店舗兼自宅がいいという考えが夫婦で一致していたからスムーズでした。
移住を決めてから実行までワクワクしていたと話す頼もしい早苗さん。
移住前からご近所付き合いを大事にしたいと思っていたとのことですが、実際どうでしょうか?
雄一郎さん|祖父の代から、親戚付き合いのように親しくさせてもらっている女性が隣に住んでいます。互いの家の塀に扉がついているので、気軽に行き来できるような感じなんですよ。自然な流れで近所付き合いができていると思います。
早苗さん|オープン前に、商品がそのままになっていた店舗の片付けに取りかかったのですが、夫婦二人だけでするには結構大変な作業を、一緒に手伝ってくださって、とってもありがたかったです。
1杯1杯丁寧にドリップするこだわりのコーヒーは地元でもおいしいと評判。
雄一郎さん|おかげ様で、移住して3か月後にはお店をオープンすることができました!店内には、カウンター席、大中小3つのテーブルを置いて、一人でもグループでも利用してもらえるように工夫しました。
早苗さん|自家焙煎にこだわりたいから、焙煎室もつくりましたよ。
淡いミントグリーンの壁が可愛らしい店内。
ご夫婦の素朴で温かい人柄を表すような、木のぬくもりを感じる外観。
お店を切り盛りしながら育児。バランスはどうでしょうか。
早苗さん|カウンターの奥が、プライベートスペースになっている構造なので、お店に立っていても、子どもたちの気配がすぐにわかる距離感なんです。長女の咲月は生まれてまだ3か月なので、主人と交代でお世話をしたりして、協力しながらやっています。
移住からオープンまで非常にスピーディだったとのことですが、
長男の龍くんは、すぐ保育園等に入れましたか?
雄一郎さん|無事に第一希望だった近所の市立保育園に入園できて安心しました。
早苗さん|以前、横浜に住んでいた頃は、何度も役所に相談に通い、保育園になんとか入園させてもらえたような状況だったんです。それまではおんぶしながら狭いスペースのキッチンに立っていたので、手を出したりするのが危なくて
雄一郎さん|咲月も、もう少し大きくなったら龍と同じ保育園に入園希望を出したいなと思っています。
早苗さん|待機児童が少なく、安心して子どもを産んで働きながら育てられるから、助かりますね。
焙煎は早苗さんの仕事だったが、二人目の出産を機に雄一郎さんも腕を磨いた。
雄一郎さん手作りコースター(右上)。コーヒーへの情熱を随所に感じる。
その他、地域の子育て環境について教えてください。
雄一郎さん|近くに公園とか、自然を身近に感じられるものがたくさんあります。長男をよく遊びに連れていきました。それと、お店の常連さんはご近所の方が多いので、子どもたちの成長を共に見守ってもらっているような感覚なんです。横のつながりを感じますし、そんな周囲の温かい目がある中で、子どもたちを育てられる環境に感謝しています。
雄一郎さん|わたしたち家族にとって、ここでの暮らしはかけがえのないものになっているように、わたしたちのカフェが地域のアンテナショップとして、お客様同士がつながれる場所になれたらいいなと思っています。
早苗さん|今度、「コーヒーの淹れ方教室」を開くのですが、お客様同士のいい交流になってくれたらうれしいです。
今後、どのような暮らしをしていきたいと考えていますか?
雄一郎さん|今の二人の夢は、お店をリフォームすることなんです。1日終わって、子どもたちを寝かしつけて、夫婦でコーヒーを飲みながら、ああでもない、こうでもないと話し合ったりしています。
早苗さん|わたしは、スイーツなどの手作りメニューを増やしたいので、キッチンが使いやすくなるといいなあ。
夢が膨らみますね!
雄一郎さん|そのためにも、今の生活をより安定させて、向上させること。夫婦で足並み揃えて頑張りたいです!
日々忙しいけれども、家族4人で旅行に行く日が楽しみと語る。
最後に移住への経験を踏まえ、移住希望者にメッセージをお願いします。
雄一郎さん・早苗さん|もし、都会暮らしで行き詰まったら、思い切って、「優しい環境」にシフトしてみてもいいものですよ。私たちは今、館林で暮らして幸せを実感しています。
保育園がお休みの日曜日は、カフェも休業日にして、「つつじが岡公園」など、市内の公園を中心に遊びに行くこともしばしば。また、交通の便がいいので、マイカーで茨城まで海水浴に行ったことも。
佐藤さんご家族も同様だが、車が一台あると生活が便利。群馬は道が広くて運転しやすいとのこと。カフェ専用の駐車場スペースも、群馬が車社会であることを考慮してしっかり確保している。