北陸新幹線「安中榛名駅」のほど近く、閑静な住宅街に家を構える、血脇さん一家。「のびのび子育てをしたい」という想いで移住を決めた5人家族は、気づけば7人に増え、安中市の静かな環境とあたたかい人々に囲まれて、今日ものびのび暮らしている。
夫婦と、榛菜さん(中2)、楓輝君(小6)、陽太君(小3)、郁織君(4歳)、彩桜ちゃん(2歳)の7人家族。家族の自慢は、兄弟仲がいいこと。浩司さんは毎日、新幹線を利用して大宮まで通勤している。
浩司さん|以前住んでいた社宅では周りに気を使う部分があって、子どもが跳ねるだけで「うるさいよ」って言ってたのが、今はどんなに騒いでも問題ない。周りもいい方々なので、「騒がしい方がいい」って言ってくれて。「静かすぎると逆に嫌だ」って言われるぐらい。
「引っ越してきたのは何年だっけ?」「えっと、陽太が生まれたときだから~」とやり取りする2人。子どもの年齢を基準に、出来事を覚えているのだとか。
どうして群馬に?
浩司さん|「お姉ちゃんが小学校に入る前までには家を建てたいね」って話をしていたんです。最初は住んでいた川崎で探したんですけど、まず価格が高いし、家を建てたとしても隣家との距離がほぼないような狭さになるな、と思って。そんなとき電車の中吊り広告でここを見つけて、「ちょっと車で行ってみる?」って話したのがきっかけかな。
理恵さん|最初に来たのは夜だったんですけど、安中榛名駅に着いたら、それこそ漫画みたいに、空に文字が出てくるぐらい「シーン」ってしてたんですよ。いつもがやがやしているところで暮らしていたので、この静けさを気に入ってしまって。
浩司さん|ちょうど分譲が始まったところだったので、タイミングがよかったのかもしれませんね。新幹線を使えば出勤は問題ないと思ったので、子育て環境を調べた上で、わりとすぐ移住を決めました。
理恵さん|幼稚園、小学校、中学校の有無は確認しました。とくに小学校は歩いて10分だから「いいね」って。当時年中だったお姉ちゃんの転園が少し心配だったけど、こっちの幼稚園の先生に相談したら「ここら辺の子はそんなに心配いらないわよ。知らない子でもみんな寄ってくるわよ」って言ってもらって。
浩司さん|結果、いじめもなくスムーズに馴染んでいきましたね。
(左)移住してから笑顔が増えたという理恵さん。(右上)和室は子ども達の遊び場。仲良く遊んでいると思った次の瞬間にはケンカが始まっていることも。(右下)ソファの上が、休日の浩司さんの定位置。
理恵さん|引っ越す前と後では、子育てもがらっと変わったかも。
どんな風に変わったんですか?
浩司さん|かみさんのイライラ度が変わりましたね。前はピリピリしてたというか。
理恵さん|同じくらいの子がいると、知らず知らず、ライバル視するようなところがあって。「何時になったら遊ばなきゃ」とか、習い事とか。そういうのに多分、疲れちゃってたんですよね。のんびり子育てできるっていう雰囲気ではなかった。
浩司さん|毎日のように「○○ちゃんちはこれを始めたって。うちもやるの?やらないの?」って話が出て、習い事バトルみたいな。そういう刺激がいいって人も、もちろんいると思うんですけど。
理恵さん|川崎は幼稚園に入るのも倍率高くて。入っても1クラス40人とかで、ぎゅうぎゅう。こっちの幼稚園は大分のんびりしていて、子育てに関しては群馬の方がゆっくりできるかなって思いました。
浩司さん|移住してきて最初の頃に「怒らなくなったね」って言ったのを覚えています。
理恵さんの定位置はリビングを見渡せるダイニングの椅子。お気に入りの絵本を読んでもらい、ご機嫌な彩桜ちゃん。
現在の暮らしはいかがですか?
浩司さん|うちは分譲地で、ご近所さんも同じ様な時期に集まってきたので、協力しようっていう連帯感が自然とあったよね。
理恵さん|もちろんこの地域だけじゃなくて、私が知り合った中では、地元の方も「新しい仲間」として受け入れてくれていた感じがします。
浩司さん|予想以上に溶け込むのが早かったですね。
理恵さん|小学校で知り合ったお母さんとかおばあちゃんが野菜をくれたり、子どもたちが遊ぶきっかけでよくしてくれるんですよ。
浩司さん|本当、助けられてます。
子育て環境にも満足?
理恵さん|小学校は1クラス20人くらいで、申し訳ないぐらい一人ひとり見てもらってて。校長先生は偉ぶらないで接してくださるし、違う学年の子ももちろん先生は知ってて、親も覚えていてくれるので、本当に小学校はここでよかったなって。
浩司さん|地域の方も声かけてくれるんだよね。
理恵さん|そうそう。中学校になると、今度は帰りが遅い時間になって心配なんですけど、「大雨の中帰ってるよ」とか「あっちの方走ってたよ」とか連絡が来るんです。いろんなところで地域の方が見守ってくれてるなって思います。
話は変わって、お二人のお仕事は?
浩司さん|移住前と同じ職場で働いています。新幹線を利用すると、東京まで1時間で着けるので問題ないですね。むしろ、座れるので快適というか、車内での寛ぎ方さえ覚えてしまえば苦ではないです。以前は田園都市線っていう混雑率の高い電車で通勤していたので、一旦乗ると身動き取れなかったんですよ(笑)。
自宅から駅までは歩くことが多い。片道徒歩15分なのでいい運動だそうだ。駅前には無料駐車場があるので、雨の日や暑い日は車も使える。
理恵さん|たとえば東京土産とか、何か欲しいものがあるときは、買ってきてもらえるのでありがたいです。
浩司さん|「買ってくると遅くなるよ」って言っても、「いいよ」って。
理恵さん|お姉ちゃんやお兄ちゃんが一緒に下の子の面倒を見てくれるので、普段生活している分には帰りが多少遅くなっても大丈夫です(笑)。
私はずっと専業主婦だったんですけど、こっちで知人に声をかけてもらって、今は週3~4回パートで働いています。
(左)血脇家でピアノを弾くのは榛菜さん1人だけ。いずれ彩桜ちゃんも弾くようになるかも!?(右)自転車で颯爽と走り出す楓輝君。近頃の休日は友達と遊ぶことが多いという。
庭にあるブランコは子ども達のお気に入り。背中を押してもらって嬉しそうな郁織君。
住んでみて感じた、群馬のいいところを教えてください。
浩司さん|田舎に住むのに抵抗がある人もここならちょうどいいのかなって。ちょっと車に乗ればある程度のものが手に入るし、物価は安い。農家が直接卸しているものもあるので、野菜も良心的な価格で買える。よく職場でも「地方で暮らすのって大変じゃないの?」って聞かれるんですけど、「思ったより不便じゃないよ」って話しています。
理恵さん|生まれてからずっと都心で暮らしてきたんですけど、今は逆に、実家に帰ると「空気が悪いな」って思うようになりましたね。窮屈だし、やけに疲れる。子ども達も同じように感じているみたいです。
血脇家全員集合。成長期の榛菜さんと楓輝君は、すでに理恵さんの身長に追いついている。
今後の目標は?
理恵さん|この辺りって、蛍が普通に飛ぶんですよ。よく驚かれるんですけど、それぐらい空気がきれい。サイクリングしやすい道もあるし、いいところだから、もっと人が来てくれるように何かしらできればいいねって、近所のお母さん方と話しています。
浩司さん|我が家でいえば、常に騒がしいので、これからも楽しくやっていければいいな。
家を建てた当初は漠然と「遊具があるといいな」と思っていたそう。たまたま、お向かいさんが工務店の方だったという縁で、ブランコやウッドデッキ、鉄棒などを作ってもらい、現在に至る。休日には子ども達が自由に遊んでいる。
基本的には車。ペーパードライバーだった理恵さんも群馬に来てから運転するようになった。反面、車移動が主になってしまい、お子さん達がバスや電車に乗れないことに気づいたそうで、少しずつ公共交通機関の乗り方も教えるようにしている。