キュウリ農家の永田さんの自宅から、仕事場であるハウスまで車で5分程度の距離だ。そのわずかな道すがら、近所の人がフレンドリーに話しかけてくる。「皆さん気さく」と顔をほころばせる永田さんは、すっかりと板倉町になじんでいるようだ。

東京都→板倉町(2012年移住) 永田 亮さん

profile

東京都杉並区荻窪で⽣まれ育つ。移住前は、都内の輸出商社に営業職のサラリーマンとして勤務していたが、就農を目指し妻の実家へ転居。研修期間を経て、キュウリ農家として独立。家族全員で力を合わせて野菜づくりに励む。

午前5時半。本日の仕事スイッチON。日々の試行錯誤が面白い。

なぜ都内でのサラリーマン生活からキュウリ農家へ転身されたのでしょうか?

理由は2つあります。東日本大震災を機に、自分の生き方を見直したこと。もう一つは、嫁の実家から送られてきた群馬の野菜が、すごくおいしくて。

時には失敗することもあるが、すべて経験ととらえる。基本を大事にする姿勢を忘れなければ確実に収量につながるという。

自分で作ってみたいと?

そうです。悶々と悩んだ後、「農家になりたい」と嫁に相談したら、二つ返事でOKでした。嫁の実家に入る形での移住だったので、うれしかったみたいです。嫁の両親も年老いてきていたので、心配だったのもあるんでしょうね。自分は次男だったのもあり、比較的自由に動けました。

群馬へ引っ越してから、就農までどんな段階を踏みましたか?

まずは、話を聞こうとJA邑楽館林をたずねてみたんです。「農家になりたいんですけれど、どうすればいいですか」って。自己資金もゼロの状態で行ったので、なかなか無謀だったと自分で思います(笑)。

はじめからキュウリ栽培を考えていましたか?

漠然と葉物がいいかなと思っていたのですが、研修先として近くのキュウリ農家の田部井さんを紹介していただいたことや、板倉町がキュウリの一大産地ということもあり、自然とそういう流れに。2年間の研修期間を経て、現在独立して4年目になりました。

良いキュウリづくりに良い土づくりは欠かせないが、近い将来キュウリの水耕栽培や年三作に挑戦したいと語る。

キュウリ栽培、新規就農者に難しくないですか?

作業は忙しいけれど、お米や果樹より敷居が低いように感じます。収穫時期になると毎日のように収穫があるから、キャッシュフローがいいんです。年二作で、12月末に定植した苗は1月末~6月末に収穫、8月中旬に定植し9月~11月に収穫します。

現在、試作段階のオランダキュウリ。小ぶりでみずみずしく、キュウリ特有の臭みがないので、スナック感覚で楽しめる。

なるほど。サイクルが早く、かつ収穫時期はロングスパンなんですね!

そうなんです。だから早く現金収入になるってことです。今年は、暑すぎたこともあり、一部が枯れて植え替えをしましたが、この失敗もいい経験ですね。

土地はどのように探したんですか?

独立する前に探していたところ、運良く、1年前までは使っていた6連棟のハウスが借りられたほか、パイプハウスも建てました。

使われなくなった2反ほどある6連棟のビニールハウスを借りて栽培している。張り替え費用などは自己資金で行った。

運を引き寄せる秘訣はありますか?

やはり、顔を少しでも広くしておくことが大事ですね。農家をやりたがっているということが、誰かの耳に入れば、覚えていてくれてつないでくれる可能性も大なので。

サラリーマン時代よりも、今の生活のほうがいいですか?

はい、まず収入面は今の生活のほうが格段にいいですね。研修中は、青年就農給付金制度を使って年間150万と嫁のパート収入を生活費にあてていました。精神面にもいいです。農家になってからというもの、ほぼストレスを感じていません。人に期待するより、自分に期待するようになったかな(笑)

独立した今も、農協や指導センターの職員の方がちょくちょく足を運んでアドバイスをしてくれる。地域全体で協力体制が整っていると感じる。

ご自分に?

自分が頑張れば、頑張った分だけ、手間暇をかければかけた分だけ、野菜は応えてくれるってことです。

なるほど、現在は、どのくらい収穫がありますか?

年間にすると反当たり27トンほどです。毎年目標とする収量を増やして、来年は30トンを目指したいと思っています。

4年目でそんなにできるものですか?

これは研修先で教わったのですが、基本こそ大事にする。土作りや湿度やCO2管理などキュウリが心地よい環境を整えてあげることをブレずにやっています。指導センターからアドバイスをいただくこともありますが、何より、嫁と嫁のお父さんが手伝ってくれて、家族全員で結束してやっているから、これだけの収穫をあげられるんだと思います。

現在は家族だけで切り盛りしているが、ゆくゆくは人を雇えるよう労働環境を整えていきたいと抱負を語る。

二人とも農業のご経験は?

嫁は会社勤めだったし、父も家庭菜園くらいで、農業で生計を立てたということはありません。それでも、二人とも楽しみながら一生懸命日々の作業に取り組んでくれるので、正直かなり助かっています。

すばらしい内助の功ですね!

そうですね、本当にありがたいです。今後は、栽培面積を拡大するとともに、人を雇えるように労働環境を整えたり、新たな栽培方法を模索していきたいと思っています。人的作業に頼るだけでなく、機械でできる部分はうまく取り入れたりもして。

気温・湿度のほか、CO2量までコンピューターで制御・管理。キュウリにとってより良い環境を作り、生産性を高めている。

今後の目標を教えてください。

やってみたいことが山ほどあります。私のような新規就農を考える人たちの支援も、今後積極的にしていけたらいいなと考えています。自分が経験したからこそ、何が大変で、何に困っているのかなど、理解しやすいと思うので。

頼もしいです!後輩新規就農者のために、ぜひ頑張ってください。

「消防団」について

群馬に引っ越してすぐに、地元の消防団に誘われて入団。交友関係がぐんと広がり、地域の行事には積極的に参加。仕事の繁忙期には「もちつもたれつ」で互いの作業を手伝うこともしばしば。

「お出かけ」について

永田さんが住む板倉町は、東北道館林ICが近く、都内はもとより、茨城、埼玉、栃木方面、群馬の前橋・高崎方面へのアクセスは抜群。朝、農作業してから、前橋のコストコにショッピングなんてことも。